DV加害者男性からの相談
大好きな女性に対して、なぜか威圧的な態度や、侮辱するようなことを言ってしまう。
力でねじ伏せたように相手を完全に支配してしまうんです。
ある男性から、こんな相談を受けました。
ここから、湯川がいろいろ質問をしていきました。
湯川:お母さんのこと、どんな風に思っていますか?
男性:とても尊敬しています。小さい頃、貧しかった母は、子どもである僕らに期待していたのだと思います。
湯川:そうなんですね。どんなことを期待しておられたんですか?
男性:母はいつもこう言っていました。『貧しかったから、勉強したくてもさせてもらえんかった。だからあんたらには、ちゃんとした所に行ってもらいたい』ってね。
湯川:そうなんですね。
男性:ええ、だから小学校の時、学校から終わって、真っ直ぐに帰らないと、よく怒られたものです。
湯川:え?どうしてですか?
男性:お風呂と夕食以外、ずっと勉強する必要があり、早く帰宅しなければならなかったのです。
湯川:ええ!そうだったんですか?
男性:ええ、母はいつも棒を持って玄関先で待っているんです。だから早く帰らないと。でもその甲斐あって医者になれました。
湯川:ええ!ちょっと待って!小さい頃、そんな状況、イヤじゃなかったの?
男性:いえ、これは母の愛だと思っています。感謝こそすれ、嫌だなんて。
彼は、そう言いながら、だんだん落ち着かない様子になりました。
彼が幸せで、何の問題も無いなら、スルーすればいいのですが、今、まさにパートナーとの間で問題が出ているわけです。
ですから、湯川はしっかり突っ込ませていただきました。
すると、ポツリポツリと話してくださいました。
本当は、母が怖かった
学校から帰ると、棒を持って玄関で待っている母が怖かった。
そんな母は養子だった父にも感情をぶつけてよくケンカしていた。
我が家では母親の機嫌次第で、天国から地獄に突き落とされることが多かった。
この家庭環境で唯一ハッキリしているのは、いつも不安定で何が起こるか分からないということ。
だから、勉強に逃げたんですね。勉強するしかなかったのです。
せめて自分がいい成績を取ってくることで、家庭内が平和になってくれたらと必死だったんです。
男性は、こう語るうちに滂沱の涙で感情を出し始めました。
本当は母親が怖かった!
本当は勉強なんてしたくなかった!
みんなと遊びたかった!
もっと子供らしくいたかった!
無邪気でいたかった!
あの頃はただただ母が怖く、何も言えず、従うだけの、無力な自分。
「母のことを尊敬しています」
そう答えることで、自分の過去の気持ちから目を背けていたんです。
無力で震えているだけの弱い自分に、向き合いたくなくて。
そして、力でパートナーを支配している時は、幻の万能感に酔えたのでしょう。
でも、大人になったからといって、母親に対して何も言えなかった感情が消えるわけではありません。
その感情が「自分の一番大事な人」パートナーに対して、出現してしまったのです。
無意識のうちに、母親への恨みを、一番大事な人にぶつけていたというわけ。
もっと言うと・・・
彼は精神的に母と乳離れできてなかった。
大人になった今でも、母に愛されたい、母に大切にされたい、という想いが残っていて、親離れできていなかったのです。
だから、乳離れできていない者同士が、よくカップルになっています。
惹かれ合いながら、恨みを持つ恋愛。
親との関係性が未完了なままだと、このようなことが起こってしまうのです。
まとめ
いづれにしても、小さなころに、しっかり愛されたという感覚が無いことで、無意識にそれを追い求めてしまう。
それは女性も男性も、変わりはありません。
そして彼の場合は、果たせない思いが、母親に対する恨みとして無意識に出てしまっていた。
母親=女性に対して、威圧的で侮辱した態度になり、相手を力でコントロールすることがやめられなかった。
そして、離婚までして何度も恨みを晴らしていたということになります。
小さい頃に置き去りになった気持ち、それを軽んじることなく向き合うことが大切だということが、よくわかる事例でした。