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こんにちは。パートナーシップ心理学アカデミー 代表 湯川央恵です。
日頃私は、夫婦関係や恋人との関係など、いわゆる“パートナーシップ”の悩みを扱うことが多いのですが、そこでたびたび登場するのが「嫉妬心」です。
愛されたい、選ばれたい、私だけを見てほしい――。
そんな想いがこじれて、相手への不信や執着に変わってしまう…
そういったパターンを、これまでよーく見てきました。
でも今日は、そうした男女間の“よくある嫉妬ではなく、仕事の場面でふと湧いてくる、もうひとつの“嫉妬”についてお話ししてみたいと思います。
ちょっと長くなりましたが、最後まで読んでいただけると、あなたも「嫉妬心マスター」になれます笑
たとえば――
部下がクライアントに褒められた瞬間、周囲が湧き立つなかで、あなたは笑顔のまま、心の中でザワッとしたことはありませんか?
「よかったね」と言いつつ、どこか落ち着かない。(…私の存在って、一体何なんだろう?)そんな不安がふとよぎる瞬間です。
嫉妬には2つの顔がある
ひとつは、「私もああなりたい」という願望ベースの嫉妬。
これは憧れや向上心が原動力で、自分を成長させてくれる前向きなエネルギーです。
もうひとつが「奪われたくない」「追い越されたくない」という恐れを出発点としたもの。
これは、自分のポジションが脅かされるように感じることで生まれる、守りの嫉妬です。
そして、部下に対して抱くザワつきの正体は、まさにこの「守りの嫉妬」なんですね。……と、ここまで読むと
「これは職場での話」と思われるかもしれません。
けれど実は、パートナーシップで感じる嫉妬も、根っこはまったく同じ構造 なの。
誰かが自分より愛されているように見えたとき、
夫が他の女性に目を向けているのではと疑ったとき、
そこには
「ああなりたい」という願いと、「奪われたくない」という不安が同時に潜んでいるんです。
つまり、仕事で感じる嫉妬も、恋愛や夫婦関係で感じる嫉妬も、どちらも自分は選ばれないかもしれない。
つまり
「私はここにいても意味がないのかも」という
「自分の存在価値が脅かされるように感じる構造」が共通しているんですよね。
「守りの嫉妬」の正体とは
パートナーシップ心理学アカデミー(PPA)では、この“守りの嫉妬”の背景には子ども時代の兄弟関係における愛の奪い合いがある、と見ています。
たとえば、第一子や中間子として生まれた人は、自分の下に弟や妹ができたとき、「それまで自分が独り占めしていた親の愛情を奪われた」と感じたかもしれません。
この「奪われた」という痛みは、心の深いところに沈み込みます。
そして大人になり、部下の台頭という出来事に出会ったとき、その時の記憶が呼び覚まされて
同じように“また奪われる”と恐怖を感じてしまうのです。
一方で、末っ子として育った人には、また別のパターンがあります。
「欲しいものは、欲しいと言えば手に入った」
「誰かが我慢してくれて、自分は貰ってきた」
そんな経験を重ねてきた人は、心の奥底で
「与えられて当然」「欲しいものは貰えるもの」という感覚が根づいていることがあります。
その場合、自分の立場が脅かされそうになったとき、無意識に「取られるくらいなら、先に押さえ込まなきゃ」と防衛反応が働いてしまうんですね。
なぜなら
後から来て奪うことが当たり前だった人ほど、後から来た誰かに奪われてしまう、という思い込みを持ちやすいから。
つまり、表向きには部下とのやりとりに見えていても、心の奥では、
子どもの頃に経験した「親の愛の取り合い」の記憶が、形を変えて繰り返し現れる のです。
だからこそ問いたい。「あなたは今、何と戦っているの?」
部下を見てザワッとする。
でも本当は、その部下ではなく、かつて親の愛を取り合った兄弟姉妹と、今も無意識に張り合い戦っているのかもしれません。
「私はもう愛されないのかも」
「私はもう必要とされていないのかも」
そんな怖さが心の奥にあるとき、人は相手を押さえ込んだり、批判したりしてしまいます。
けれど本当に必要なのは
かつて“愛されなくなること”を恐れて必死だった、小さな自分の気持ちに気づいてあげること。
「奪われる」と感じるのはそれだけ「大切にされたかった証拠」なのです。
そして同時に「奪われる」と感じるためには、その前に「当然のように独り占めしていた時代があった」からこそ。
独り占めしていた、あるいはできるはずだと信じていた前提があるからこそ、
それを脅かす存在に出会ったとき、強烈な怒りが湧き上がる。
つまり私たちは
「自分は被害者だった」という物語だけで終わってはいけない。
その裏には、自分も「誰かを押しのけてでも得ようとしていた」があったことを認めてはじめて、真に脚本を書き換える入り口に立てるんですね。
夫婦関係でも同じ脚本が繰り返される
この心理は、仕事だけではありません。
夫婦関係の中でも、まったく同じような
「奪われた」
「私だけ損してる」
という思い込みが、怒りや不満という形で顔を出してきます。
あなたがもし今、
「なんで私ばっかり我慢してるの?」
「私はこんなにやってるのに、なんで…」
そんな感情にとらわれているなら、そこにもまた 愛を独り占めできるはず という前提が隠れていないか振り返ってみてください。
そろそろ、「競争」の脚本から降りませんか?
そろそろ「誰かと競って勝ち取らなきゃ価値がない」という思い込みから、卒業しませんか?
部下を持つあなたの役割は、誰よりも優れていることを証明し続けることではありません。
本当は、次の誰かを育て、未来を託す立場にいるのです。
だからこそ、「奪われる・奪う」のゲームを終えて、与えることで循環を生み出す側へと自分の立ち位置を変えていく。
それが、あなたのこれからの人生を、もっと自由に、もっと豊かにしてくれる変化なのかもしれません。
編集後記
PPA(パートナーシップ心理学アカデミー)では、こうした「心の深い層にある思い込み」や「過去の脚本の再演」に気づき、それを書き換えていくためのサポートを行っています。
あなたがもし今、「もう奪われるのは嫌だ」「でも本当は、愛し合える関係を築きたい」
そんな思いを抱えているのなら、ぜひ一度、私たちのセミナーや講座で、新しい視点と出会ってみてください。
与えることができる人には
巡り巡って、本当に満たされるものが返ってくる。
そんな循環の中で、人生を変えていきましょう。
それではまた!
湯川央恵